平川均:トランプ大統領と COVID-19 は世界経済をどう変えるか

はじめに
 2019 年末に中国・武漢で集団発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミ
ック(世界的流行)は、2020 年 2 月アジアの韓国、日本ほかの近隣諸国へ、3 月以降はヨ
ーロッパのイタリア、スペイン、そしてアメリカに、5 月に入ると先進国から新興国、発展
途上国へとほぼ全世界へと広がった。2020 年 8 月末の世界の感染者数は 2500 万人を超え、
アメリカ、ブラジル、インド、ロシアの人口大国で感染が急増している。COVID-19 対策で
は程度に差はあるものの、都市封鎖、国境封鎖が次々と実施された。生産も消費も劇的に縮
小し、主要国は相次いで大規模な財政、金融支援策に乗り出している。5 月以降、アメリカ
をはじめ主要国で経済活動の再開に向けた試みが始まるが、今のところ各国は有効な感染
症対策が打ち出せないでいる。
その打撃は 2008 年の世界金融恐慌はもちろん 1929 年の世界恐慌に比肩する可能性が高
い。IMF の 2020 年 6 月の世界経済見通しは 4 月の見通しを 19%下方修正し、世界がマイ
ナス(▲)4.9%、先進経済▲8.0%、新興市場・発展途上経済▲3.0%(中国 1.0%)とした。
もっとも、COVID-19 危機はこれを機に ICT 関連産業の発展がみられ、各国の産業構造
の再編を加速化させている。同時に、トランプ米大統領が中国に仕掛けた貿易戦争とも重な
って、過去数十年間、推し進められてきた経済のグローバル化に一層の再編を強いている。
実際、覇権国のアメリカによる政治的圧力と感染症リスクは世界の人とモノの流れ、生産
のネットワーク、グローバル・バリューチェーンをいたるところで切断し再編を余儀なくさ
せている。これまでグローバル化はアジアの新興国、特に中国に発展をもたらした。それが
劇的な再編を強いられている。
本報告では、トランプ政権の対中政策と COVID-19 危機がもたらす世界経済の構造変化
について考えてみたい。まず.米中貿易戦争の展開と構造を COVID-19 発生後も含めて確
認した後、中国の発展と「一帯一路」をアジアの発展の枠組みの中で考察する。次いで、米
中貿易戦争と COVID-19 が強いたグローバルなサプライチェーンの切断と再編、さらに新
興経済・発展途上経済に与える影響を総合的に捉え、コロナ危機後の世界経済の構造変化の
方向性を探る。